ふとした時に痴漢された時を思い出してしまう。
何年も前のことなのに、なぜまだ苦しめられなきゃいけないのか。
あれからバスが怖くて乗れなくなってしまった。
残りの高校生活は歩いて通学した。とても長くて、疲れた。
バスに乗れたらすぐなのに。快適なのに。
その瞬間、ものすごい恐怖に覆われて固まってしまって、声が出せなかった。声が出なかった。
犯人が降りるまで耐えるしかなかった。永遠の地獄のようだった。
あの時、声が出せたら。助けを求められたら。対抗出来たら。
駅員さんと警察に突き出せたら。
私がそれが出来なかったことで、犯人が今ものうのうと同じことを違う人にしているのではないか。
私が犯人を止められなかったから、他にも泣き寝入りしている人がいるのではないか。
私に勇気があったら。
フラッシュバックして、何度でも怒りとやるせなさがこみ上げてくる。
犯人はその気持ち悪さ、おぞましさ、感じたことないのだろうか。
想像も出来ないから、あんなことが出来たんだろうな。