先日、俺が付き合っていて、かつ、結婚したいねと言いあった先輩が事故で亡くなった。
（この手紙では愛華と呼ぶことにする。）
でも、死んだということを実感できない。
スマホの連絡アプリも、彼女の部屋も、借りていた本もそのまま。まるで、愛華という存在というのは元から存在していなかったように、何もかもがそのままで、何もかもが色あせている。
死んだというのは嘘なんじゃないかとか、ただ頭を打って気絶しているだけじゃないかとか思っていた。
でも、その死体を見たとき、理解してしまった。もう死んでいるのだと。
柔らかかった肌が硬くて、すぐ赤くなった頬も手も何もかもが白くて、暖かかった掌は冷たかった。
でも、信じられない。
今でも、電話すればすぐ出てくれるんじゃないかと考えてしまう。実際、何個かメッセージを送ったりしてしまった。
その度に、もういないことを再確認する。
ぽっかり心に穴が開いたようだ。
死んだなんて、信じられない。
葬式にも行けなかった。別れなんて言いたくなかった。
そこで読む手紙なんてかきたくなかった。
愛華の両親も、俺自身の両親も、行けと言ってきた。でも、どうしても無理だ。
なんでもういないんだろう。
なんでもう声を聴けないんだろう。
なんでもう話せないんだろう。
なんでもうあの笑顔をみれないのだろう。
もっと名前を呼べばよかった
もっと早くプロポーズをして、もっと早く同棲していればよかった
もっと大切だと伝えておけばよかった
もっと愛していると言っておけばよかった
もっと早く病院に行けばよかった
そうすればせめて少しだけでも生きてる状態で会えたかもしれないのに
そうしたら、もしかしたら生きていたかもしれないのに
俺が一緒に行けばよかった。俺が代わりに行って、俺が代わりに死ねばよかった。
愛華のいない世界になんか、生きる価値なんてない。
一生一緒にいようね、と。
結婚しようね、と。
プロポーズするから、と言ったのに。
なにも守れてない。なにもなせてない。
一緒に行こうねといったレストランも、一緒に見ようねと言った映画も、行けてないまま。
もう二度と一緒になんか行けない。
もう二度と会えない。
会いたいよ。もう一度
俺にもう一度笑いかけてよ
会いたい
会いたくてしょうがない。
死んだなんて信じない。信じたくない。
死んだなんて嘘だって言えよ
家族ぐるみでドッキリを掛けてみたんですって言えよ
思いのほか悲しんじゃって後に引けなくなっちゃってたんですって言えよ
生きてるって言って出てこいよおねがいだから
ずっと一緒に生きたかった。
せっかく、あなたの心の氷はとけて、俺は人をもう一度愛せるようになれたのに。
残酷だよ
どうして死んだんだよ
もう一度会いたい。
俺は、どうしたら、君を救うことができたの
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