痴漢だとか性犯罪にあった人が当時のことを思い出して苦しんでいるニュースを見ると、自分も当事者なのにどうしてこんなに平気なんだろうと思うことがある。
思い出しても、「ああ、そうか」で終わる。
嫌なことだったのは確か。
とてつもなく嫌で体がゾワゾワしてこの世から消えたくなることだった。当時はそう感じていた。
でも、過去のことになった今、思い出した瞬間に心が空っぽになる。感情も過去のものになっていた。
一番最悪な思い出である身内から体を触られたことも、痴漢に遭った時にその身内が心配してきて死ねばいいのにと思ったことも全部過去になっていた。
過去にしないと生きていけないから、頭の防衛本能が働いて、何も感じないようになったのかもしれない。
そう考えると、何だか自分が変な人間な気がする。やられたことに対しては依然として心は空っぽのままだけど、その空っぽであることがとてつもなく変。
自分の体を触ってきた奴はのうのうと生きてるのか!とかも何も思わない。終わったこととして何も感じない。きっと一度許してしまったから、それで終わりにしてしまったのだと思う。
一度きちんと思い出してみようとして、その時の状況とか感情とかをリアルに思い出そうとしたら、無性に暴れ出したくなって涙が出て頭が痛くなった。
だからこれ以上何もせずに放置するしかない。
空っぽのまんまにしかできない。平気なフリじゃなくて平気でいないといけない。そうしないと何もかもが溢れ出てきて取り返しのつかないことになりそう。