周りは俺を女だと認識して接してくる。
それがとても不快だ。
でも、仕方ない。向こうは知らないんだから。
俺が自分では自分のことを男だと思っていることを。
だから、毎日毎日、来る日も来る日も、誰と何をしても。
その人との間に見えない、大きな壁があるような気がして、やるせなかった。
それがもう耐えられなくて、俺は1番仲良くしていた友達に、カミングアウトをした。
そいつは良い奴で、俺の事を認めてくれた。
これからも、大好きな友達だと言ってくれた。
母さんにも相談した。
母さんも、優しい人で。
生きたいように生きなさい。と言ってくれた。
こんなにも幸せなことはきっと無いのだろう。
けれど、何かが足りないと感じてしまう。
真の身体。
こればかりはどうやっても手に入れることが出来ない。
性別適合手術を受けたって
戸籍上の性別をかえたって
手に入らない。
届かない。
普通の人にはなれない。
どんなにもがき苦しんでも、
綺麗になれない。
普通、一般的、らしい、という
型に当てはまれない。
当てはまらなければいけないのだろうか。
そうだ。俺は臆病だから、当てはまろうとしている。
世間の人々、皆が皆、理解がある訳では無い。
何処かで何かを言われるのが怖くて怖くてたまらない。
一人だけの、特別な、凄い自分になってやる!って思えるようになりたい。
世界は変わってくれない。自分が変わるしかない。
分かってるけど、
怖くて怖くて仕方がない。
そんな自分が情けなくて、
もっと辛い思いをしている人はいるのに
被害者面をしているようで
消えたくなる。
だから、最近はよく思う。
海に沈んでみたい、と。
透き通っていて、綺麗で、どんな形にもなれて、正解がなくて、
居ていて心地よい、深い深い、果てのない海に沈んで
消えてみたい。
生まれ変わって、普通になりたい。
無理だけどさ。
だから、俺は明日からも
自分を探しに行くんだ。
いい所も、悪い所も、沢山見つけて
長い時間をかけて向き合って、悩んで、自信をつけて、
明日をゆっくり歩いていくんだ。
そうしたら、
少しは楽になれるかもしれない。
笑顔で生きていきたいから。