「I love you.」という言葉を「月が綺麗ですね」とする話は有名だが、私ならなんと訳すのか、少し考えていた。
割と大人な年齢になってしまったと思うけれども、私は恋愛の経験が著しく乏しく、未だに誰とも恋愛的な意味で交際したことがない。
世間話の一貫として恋人が居ないと言うと高確率で「どんな人が好きなの?」「理想の人は?」と問われることは大人になってもやはり多いけれども、それに具体的に答えることが出来ないでいる。
容姿も、性格のタイプも、身長も、収入も学歴も何もかも、こだわること自体がなんだか無意味に思えてしまうからである。
本当にその人を愛しているなら、誰から見ても素敵なところや社会的に認められるところなんて評価するような次元にないと思われる…というか、一般的には欠点に思われるようなところや短所とも言えるところが許せてこその愛なのでは無いかと思うのだ。
さらに言うならば、自分個人が好ましいと思えない点や許し難い部分すらも、「ただその人である」という1点のみで許容し愛せてこそ愛と呼べるのでは無いかと思うのだ。
もちろん、一般的にであれ個人的にであれ相手の好きなところや素敵な部分が欠点に思われるような要素を覆すほどに愛するという愛の形もあるとは思う。
それでも自分のこの考えに基づくとするならば、きっと私は自分の抱く愛を月の綺麗さに託すことはないだろうなと思ったのだ。
きっと私が誰かを愛するなら、ただ
「あなたの全てを許します」
とだけ伝えたくなるのかもしれないなと思ったのだ。