恋をしてしまった
それは紛れもない恋だ。
いつも笑っている彼に惹かれてしまった。
私に会うと、顔を綻ばせ、陽気な声で挨拶してくれる。
私の名前を呼んでくれる。その、弾んだ明るい声で。
彼の仕草ひとつひとつが愛らしくて、小さな子供みたいに見えるのにどこか色気があって。
彼が、表情を変えるたび、動くたびに、私の心は跳ねて、
鼓動の音が聞こえてないか、なんて思ったり。
でも、時々彼は真剣な顔をして、彼らしくない真面目なことを言う。
真っ直ぐにこちらを見て、少しでも気を抜けばその瞳に吸い込まれそうになる。
彼の心には、とても深くて、残酷な傷がある。
大人でも大泣きしたくなっちゃうような、残虐な過去。
なのに。いつもそれを隠すかのようによく分からない不思議な言動や自由奔放な行動をし、無邪気な表情をするんだ。
でも、隠しきれてない。分かっちゃうんだ。
いつも見てるから。
彼の唇から吹かれる様々な言葉に隠れて、辛い過去がある。
見え隠れする。華やかな薔薇の花弁に隠れる棘(とげ)みたいに。
それを隠そうと、強がる彼が好きだ
いつも真っ向から想いを伝えてくれる彼が好きだ
どんな人にも輝きを見つけられちゃう彼が好きだ
自由奔放で、だけど友を大切にする彼が好きだ
時々、目を疑っちゃうくらい大人びた表情を浮かべる彼が好きだ
冗談か本当か分からない、顔が真っ赤になっちゃうような言葉を言う彼が好きだ
そうやって、いつも余裕そうなのに、時々、本当に時々。顔を赤くして、愛くるしい表情になる彼が好きだ
スキンシップとか友達には激しいのに、私には遠慮している彼が好きだ
彼の紡ぐ音楽も、ダンスも、歌声も。
全てが大好きで、世界一、いや、宇宙一愛している
そう、彼は私たちとは違う世界に住む住民だとしても。
決して交わることのできない世界でも、私のこの気持ちは本物。
二次元と言われようと、ヲタクと言われようと知ったことか。
これは恋なんだ!
次元を超えて、君にこの声を、気持ちを届けたい。
私は自分を信じ、画面の向こうの世界にいる彼に今日も恋をしている。