さっき、お母さんに、
「これから、なりたいものはあるの?」
って聞かれたの。
最初に思い浮かんだの、なんだと思う?
……「石ころ」。
我ながら、馬鹿かなぁ、って思ったよ。
石ころになってどうすんだ、って話よ。
てか、お母さんが聞きたかったのはそんなじゃないし。
将来の夢、か。
私に将来なんてあるのかなぁ。
石ころ。
そこらへんに転がってる石ころになりたい。
誰にも特別扱いされない、そこにただあるだけのもの。
でもさ、その「ただの石」を集める人だっているじゃん。
石が好きな人とか、
石を集めるのが好きな人っているじゃん。
そういう風に考えるとさぁ、
ほんとに、もう、無理なんだなぁ、って、思うの。
ごめんね、何言ってるかわかんないよね。
自分でもわかんないや。
重いものを持たせてる上に、
「歩くのをやめるな」って言われるのは、辛いじゃん。
「夢來は可愛いね」
「夢來は頭がいいね」
「夢來は絵も字も上手だね」
「夢來は運動までできるんだね」
「夢來は、みんなに優しいね」
「夢來は、何でもできるんだね」
可愛くなろうと努力してるから。
褒められるために必死に勉強したから。
金賞をとって、凄いねって言われたくて、頑張って繰り返し書いたから。
認めてもらえるように練習したから。
愛想振り撒いて、優しく、みんなの理想でいようとしたから。
何でもできるわけじゃないよ。
私は努力は苦手だし
箸の持ち方は下手だし
声は小さいし
すぐ怒るし
人の顔色ばっかり窺ってさ
もう嫌だよ。
期待が重い。
そんな顔しないでよ、
私には無理だった。
ごめんなさい