僕の家は少々食にうるさかった。
おかげで僕は常人より多めに食べさせられた。
食事を作ることが嫌なのに頑張って作る母。
本人はなんでも食べるのに僕には少々口を出す父。
一般から見れば「優しい」のだろう。
僕も嬉しかった。
まぁそれも幼い時はの話だけど。
最近の僕はストレスのせいだろうか、食事が嫌になった。
山積みになった食べ物と飲み込む行為が酷く嫌になった。
運動をしても体重が減る様子や痩せる様子がなく、BMIは多分30はある。
間食も入らず、食後は水を飲むのもやっとで、朝は空腹を感じなくなった。
最終的には水も嫌で脱水症になりやすくなった。
今も毎日軽度の脱水状態だ。
食べようと思えば食べられる。
その代わり、胃の痛み、吐き気、更には目に見えてわかるほど腹部が膨張する。はっきり言おう。かなり辛い。
ただ、吐き出すと、食事の時間の前に空腹が現れホッとした。
夏は「夏バテ」、冬は「動かないから」の一言で片付け、ただ「食べなさい」と言える者が心底羨ましかった。
そんなに嫌なら食べなきゃいいとは思うのだけど、脳裏で響く「残すの?もったいなww」みたいな声に逆らえず。
笑顔を貼り付けて、もう味もわかってないのに「おいしい」とか「味付けちょうどいいと思う」なんてことを言ってしまう。
申し訳ないし不謹慎極まりないが、過食か拒食かどっちかにでもなってくれればいいのに!!
家族だけじゃない。友人や恋人との食事も嫌だった。
例えどこであろうとも、恋人に食事風景を見られるのが嫌だった。
優しいから「これだから太るんだよ?」とまでは言わない。
けれども、ほっそりした彼女の横に自分が座ると、自分も笑われ彼女も巻き込まれるのではないかと恐ろしくなる。
誰かが近くにいると、わずかだが確かにあった「食べないと」という気すら失せてしまう。
友人との食事は酷く味気ない。
悲しいことに周りが「美味しい」というのに対し「正気か?」と思ってしまうことがある。
「これはどう考えても冷凍」「これは火の通りが甘い」「味がしない」「油塗れ、素材が死んでる」「消しゴムみたい」
ただでさえ食べるのが嫌なのに、楽しめないときてはどうしようもない。結局パックの紅茶とデザート類のアイスくらいしか頼めないのだ。
なんてことはない。幼い頃から「おいしい」「高級」とされるものを食べ続けたせいだろう。
魚屋から取り寄せる口では言えない値の金目鯛の煮付けとかいい例だ(今でも覚えてる、あれ以上の美味しさを未だ味わったことがない)
まあ「高級」だからといって全部美味しいわけじゃないけど。
(これは単なる好き嫌いだが、僕としてはどこかのホテルでご馳走された、玉ねぎとなんかのムースがトラウマだ)
そういう意味ではやはり完全食はいい。
味はいつでも同じ、規定の量できちんと栄養が取れるのがいい。
新鮮なビタミンは果物か野菜で取るしかないが。
普段の食事をカロリーメイトかなんかで調整できたらどれほどいいか……。
僕のゲーム友達は朝はパン、昼は自分なりに調整した弁当、夜はかなり軽めの一汁ニ菜だった(本当に少ない)。それでしっかり勉強もできて、親は程よく放任で(うちは過保護だ)、Pokemon GOのため長距離を歩いてバテないんだから、羨ましいかぎりだ。
このままだと就職したとき、味に耐えられなくて食べられない、吐きそうで食べられない、金がなくて食べられないの三重苦になりそうだ。怖い。
今の僕がまともに味を理解できるのはせいぜいワインと烏龍茶くらいだ。
結論としては、舌を肥やすとあとで泣きを見ることになる。
ストレスは放置しちゃだめ。
僕が言えるのはそのくらいだ。