幼い頃からの夢。デザイナーになるために、県外の専門学校に行って勉強しようとしたけど
不真面目な自分がそう簡単に努力できるわけがなくて
周りとどんどん差がついて向いてないんだって自覚して
諦めようとも思ったけど、やっぱり諦めきれなくて
なんとか広告代理店に就くことができた。
でも聞いていた仕事内容とは全く違って
毎日やりたくもない仕事をそれでも頑張ってやってきた。
夢が叶えられなかった人だっている。これで辞めたりしたら負けだと思って。
ある日社長と副社長に呼び出された。
「この原稿のミスはお前だな？」
確かに身に覚えがあった。自分のミスだ。やってしまった。
(怒られたくない)
そう思ってしまったことが、今ではダメだったんだと後悔している。
私は嘘をついた。自分のミスではない、覚えていない。
バレバレの嘘だった。
当時私の部署には自分含め３人いた。
勤務歴７年目の若めの女の人。副社長の妹だという女の人。
2人とも勤務歴が長いためミスをするのは難しい。
他にミスするやつなんて私しかいなかった。
その日限りで会社をクビになった。当然だ。
嘘をつく社員なんて今後どんな損害を与えるかわからない。
私が社長なら同じことをする。
クビになった３日間くらいはずっと死ぬことばかり考えていた。
専門学校時の担任や母から電話をもらった。
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
そして地元に帰ることにした。
次の転職先が決まるまで私が良からぬ考えを持たないように
一ヶ月くらい母の会社でアルバイトをすることになった。
母の会社の会長さんが転職先を見つけてくださった。
営業の仕事だった。
人見知りで、話もまともに続かなくて、愛想のない私にできるのだろうか。
でも今は職歴に傷のついた私を拾ってくれるだけでもありがたいと母は言う。
私もそう思うのでありがたく入社することにした。
やはり現実というものはそう簡単に上手くいかない。
３ヶ月頑張っても一つも営業がとれない。
笑顔を心がけても、大きな声で話しかけても、わかりやすいように内容を考えてもダメだった。
あまりに営業がとれない私を社長は、どこかでさぼっているのではないかと疑っている。
今度３月1日からデザイン事務所へ出向することになる。
出向してもまた失敗をしたら嘘をついて隠してしまうのではないか。
私にデザインのセンスが無くて使えない社員認定されるのではないか。
あの時嘘をつかなければまだ私はあの会社で上手くやっているのだろうか。
あの時もっと頑張って営業してればどう変わっていたんだろうか。
こんなことを考えるだけで頭によぎるのは”死にたい”という言葉。
死ねばすべて終わる。死ねば楽になれる。死ねば私はどうなる？
死ねばどこへ行く？この目の前の光景も人間もすべて忘れて転生するのだろうか。
それともここではない違う空間で今よりひどい日々を過ごすのだろうか。
わからない。わからないこそ怖い。
